• インタビュー
  • 2021/09/17

「最初は震えました」日本一外傷の多い接骨院 誕生秘話

「外傷をみられるようになるには、外傷を経験するしかない」———角野弘明先生が運営するゲレンデ接骨院『スノーエイド』には毎シーズン、多くの参加希望者が応募してくる。参加者たちは、冬山のスキー場という外傷と隣り合わせの環境下に身を置くことで、通常の柔道整復師が経験する一生分の外傷処置を経験することになるという。角野先生がゲレンデ接骨院に携わることになったきっかけ、応募者の採用基準、さらには参加者の声を〝柔道整復師の最前線〟から、お届けする。
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角野 弘明
株式会社SNOWAID代表取締役
1990年10月15日生まれ。接骨院、整形外科勤務を経て他社のゲレンデ接骨院に参加。外傷の苦手意識が一変したことから、『スノーエイド』を立ち上げる。現在では冬季100日間で外傷診療件数・1000件を越える驚異的な実績を上げ、〝日本一外傷が訪れる接骨院〟に成長させた。



トワテック
まずは角野先生のご経歴と、スノーエイド立ち上げの経緯を教えてください。

角野
柔道整復師の資格を取得して接骨院に約3年間、整形外科に1年間、勤務しました。その後、オフシーズンは知り合いの接骨院を手伝いつつ、初めてゲレンデ接骨院に参加しました。

2年連続で2シーズン経験させてもらって、スノーエイドの立ち上げに至ります。


トワテック
接骨院、整形外科時代からゲレンデ接骨院の存在はご存知だった?

角野
初めは全く知りませんでした。今でこそ、外傷をめちゃくちゃみていますけど、もともとは強い苦手意識を抱いていたんです。本音で答えると怖かったんですね。僕が勤めていた接骨院は外傷をほとんどみる機会がない治療院でしたので、急性の患者さんには(怖いな、できれば来てほしくないな)と感じていました。本当にお恥ずかしい限りなのですが……。

トワテック
そのような心境からゲレンデ接骨院に参加された理由はなんでしょう?

角野
ゆくゆくは開業を目指していたので、外傷を避け続けている自分に葛藤がありました。何もできないことへの劣等感や不安を払拭したい思いから整形外科に転職しましたが、全くみさせてもらえず、色々と調べた結果、辿り着いたのがゲレンデ接骨院だったんです。

トワテック
外傷をみることのない場所から、一生分の外傷が訪れる環境に身を置かれたわけですね。

角野
最初は震えまくっていました(笑)。外傷をみられる先生は、一般的にお師匠さんがいたりとか、整形外科で経験を積んだりとか基本的な土台があるものなのですが、僕にはそういった経験が一切なかった。セミナーに通ってみたり、独学で勉強したりしていましたけど、いわばぶっつけ本番だったので、正直メチャクチャ怖かったです。


トワテック
ゲレンデ接骨院で治療を重ねることで外傷に慣れていった?

角野
そうですね、現場の叩き上げで経験を積んで力をつけていきました。参加1年目に配属されたゲレンデ接骨院の山の麓に外傷の凄腕の先生がいて、毎週そこに通って技術を教えていただきました。その時の経験と教わった内容が今日の土台になっています。

スノーエイド設立の理念は「すべての柔道整復師が外傷を学べる環境を整えてあげること」なんです。僕が苦労したのは外傷を学べる環境に辿り着くことでした。学びたいけど、学ぶ場所がない。情報が溢れている現代でも、きっと数年前の僕と同じような悩みを抱えている人は少なくないと考えました。


トワテック
学びたくても外傷に触れる機会がないと……。

角野
「外傷に強い治療院に勤めればいいじゃないか」と考える人もいるかもしれませんが、整復の第一歩を経験するハードルって、もの凄く高いんですね。例えば、骨折や脱臼した患者さんが来たときに、経験少ないスタッフでは、まず触らせてもらえません。最終的には院長先生が対応しますから、駆け出しの柔整師は学べない状況が必然的に生まれてしまう。外傷をみるための一歩目のハードルを越える環境を提供したい、それがスノーエイドの原点になっています。

(後編へ続く)

おまけ動画「角野弘明に10の質問(前編)」

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取材
トワテック編集部(柔整チーム)
トワテックの柔整師・トレーナー担当部署。商品開発、通販サイトの運営、取材を主な業務としている。平均年齢は30代。

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