vol.0148思春期の腰椎分離症について
今回はスポーツにちなんでスポーツを行う若年者の腰痛で一般的な病態の1つでもある腰椎分離症について考えていきます。
特に思春期の腰椎分離症に少しスポットを当てたいと思います。
腰椎分離症とは、腰椎椎弓の関節突起間部で欠損が生じ分離した状態のことをいい、好発部位は第5腰椎で時に第4腰椎にも発生します。
18歳以下のスポーツ選手の腰痛原因の30~40%の割合を占めると言われ、積極的にスポーツを行う青少年の発生率は、一般の子どもに比べ約3倍も高いとされています。
遺伝的な要因もあるとは言われますが、腰椎分離症は椎弓関節突起間部の疲労骨折で、成長期の骨強度が弱く筋の柔軟性が乏しい時期に強い負荷が繰り返し加わることによって起こると考えられています。
腰椎運動中に椎間関節突起間部にかかる負荷が最大となる動作は伸展・回旋動作です。
これらの動作の繰り返しにより発症するので、特にそういった動作の多いバレーボールやフェンシングなどは発生率が高い競技でもあります。
主な症状は腰痛と腰椎伸展時痛です。
また棘突起に限局した痛み、鈍痛、下肢痛やしびれ感を来す場合もあります。
画像診断では発生初期の段階では判断しにくく、CTやMRIなども場合によっては必要です。
レントゲンではスコッチテリアサインと呼ばれる、腰椎の斜位撮影によって浮かび上がってくる犬の首輪にそっくりな画像が有名ですが、このサインが分かる時期は腰椎分離症がほぼ完成されている時期なので保存的には修復が難しい時期でもあります。
治療は分離部の骨癒合を目的とした保存療法が原則です。
薬物療法などで痛みの軽減を図り、装具療法や運動療法等で分離の進行と不安定性の予防を行っていきます。
思春期の腰椎分離症は成人になってからのとは異なり、分離部の骨癒合が期待できます。
骨癒合が得られず分離症が遺残した場合でも腰部のストレッチングや筋力強化訓練により安定した腰を得られれば支障をきたすことは少ないです。
しかしそれでも痛みが強く日常生活困難な場合は患者さんと相談して手術療法を行うこともあります。
またスポーツを長く続けていくためにも、ただ患部を治療しその場しのぎの痛みのケアをするだけではなく、フォームや体作りなどの先を見据えた再発防止がとても重要になってきます。
- 北村 大也先生
- 整形外科医