vol.0152上腕骨外側上顆炎について
今回はテニス肘ともいわれる上腕骨外側上顆について考えていきましょう。
上腕骨外側上顆炎とは、前腕伸筋群の使い過ぎにより外側上顆に付着する伸筋群の一部が変性・部分断裂することで生じる付着部での炎症です。
伸筋群の中でも特に深層に存在する短撓側手根伸筋腱の関与が指摘されていて、原因として血流の問題なども示唆されています。
上腕骨外側上顆がテニス肘と呼ばれる由来は、テニス競技におけるバックハンドストロークの際に生じる障害として初めて報告されたことです。
発生機序としては肘関節を伸展しながら手関節を無理に伸展させようとする動作など、前腕伸筋群に過大な伸張性収縮が繰り返し加わることにより、起始部である外側上顆に障害が発生します。
初診時に疑う主訴として、
- 肘関節外側の痛み(上腕または前腕外側への放散痛)を訴え、外側上顆のやや内側遠位に圧痛を認める。
- 肘外側部腫脹、前腕伸筋群の緊張
- 肘関節の可動域痛(重い荷物を回内位で持ったり、雑巾を絞ったりなどの言葉がキーワード)
上記以外も日常生活における手関節・肘関節の使用頻度やスポーツ歴、症状発現から初診時までの経過を確認する必要があります。
肘だけの問題なのか、頚からもしくは肩からの症状なのかも忘れず鑑別診断をしなければなりません。
上腕骨外側上顆炎の局所的な補助診断としては2つあります。
- Thomsen test(手関節抵抗性伸展テスト)
- 中指抵抗性伸展テスト
必ず2つのテストを行います。
なぜなら総指伸筋と短撓側手根伸筋の腱は外側上顆に付着するが、腱自体は別のものであるためそれぞれの痛みを優位に誘発するテストだからです。
治療は原則的に保存療法です。
難治例に対して外側上顆部の筋剥離術、短撓側手根伸筋の延長術が行われます。
しかし個人差はありますがほとんどの患者さんは半年もしくは長くても1年半程度で改善がみられます。
多くの因子が相互に作用し発生するため再発を繰り返すことがあるので、日常生活動作を指導し予防に努めることが大切です。
- 安静及び日常生活指導
- 運動療法(前腕伸筋群のストレッチなど外側上顆にかかる負担を軽減)
- 薬物療法(※ステロイド注射は短期間には効果的ですが、再発の危険性がある)
- 装具療法(エルボーバンドなど場合によっては使用。
前腕近位で伸筋群筋腹を圧迫し外側上顆へのストレスを軽減するタイプのものと手関節を固定することで安静を保つタイプの2種類がある)
また最近の治療では栄養を豊富に含んだPRP(血小板を濃縮した多血血小板)を利用し、慢性化した患部を急性の状態に戻すことにより、自己治癒力を再活性化する方法があります。
しかしこの方法にはまだ限界があり、上腕骨外側上顆のみの痛みの原因だけに適応ということです。
治療法としては上記に述べた方法がいくつかあり、選択肢はさまざまですが結果的には改善は同じくらいなので患者さんとの話し合いで選択し提供していく必要があります。
- 北村 大也先生
- 整形外科医