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vol.0167肩関節触診のポイントについて 今回は肩関節の診察に役立つ触診のポイントを見ていきたいと思います。 特にランドマークになる部分を重点的に見ていきましょう。 1. 肩峰 肩甲棘の下縁を外側方向へ触れていくと、ほぼ直角に前方へ折れる肩峰角を触診することができます。 この肩峰角から前方へ広がる扁平な骨部位が肩峰です。 前方では鎖骨と関節し(肩鎖関節)、肩甲骨運動の支点となる肩峰には、僧帽筋の中部線維が停止し、三角筋の中部線維が起始します。 また、この部分は上肢長の計測において重要なランドマークとなります。 2. 烏口突起 まずは鎖骨の全長を確認します。 その後、鎖骨の全長を3等分し、外側の部位より1~1.5横指ほど尾側を圧迫すると、烏口突起が触診できます。 烏口突起の骨縁に沿って外側に触れていくと、烏口突起の尖端が確認できます。 確認として一方の指を烏口突起にあて、もう一方の手で肩甲骨下角を把持し、他動的に動かしてみると、肩甲骨の動きに伴い前方で触れている烏口突起も一緒に動く様子を触診できます。 もし動かなければ、烏口突起以外の骨隆起を触れている可能性があるのでしっかりと確認しましょう。 3. 大結節、小結節、結節間溝 烏口突起と小結節はほぼ同じ高さに位置します。 そしてその高さで上腕骨頭側から尾側に向かうように、検者の指3本位で掴み被検者に肩関節の内外旋運動をしてもらうと、結節間溝のくぼみと、大結節、小結節が通過するのを確認することができます。 確認として結節間溝部に指を当てて、被検者は肘90°屈曲位で前腕回内外を行うと結節間溝部に上腕二頭筋長頭腱の滑走を触診することができます。 4. 烏口上腕靭帯 烏口上腕靭帯は烏口突起の基部から上腕骨の大・小結節をつなぐ靭帯ですが、多くの例で小胸 筋からの健線維が合流し構成されています。 疎性結合組織が主体の靭帯で非常に柔軟性に富む一方で、いったん瘢痕化すると著名な拘縮を引き起こすので臨床上大変重要な組織です。 触診は肩関節を軽度伸展位にし、烏口突起と大・小結節とを一直線につないだ線上に指をおき、肩関節を伸展、内転、外旋させると烏口上腕靭帯の緊張を感じることができます。 5. 腱板疎部(rotator iterval)の触診 腱板疎部とは、解剖学的には烏口突起外側における棘上筋腱と肩甲下筋腱との間隙のことで、棘上筋腱部の上層には烏口上腕靭帯が重なるようについており、肩甲下筋腱との間には関節包、滑膜が介在しています。 触診は烏口上腕靭帯を触診し、そのすぐ上方に骨性の硬さを触診することができます。 最後に、肩関節の診察時に使う略語を紹介します。 医療機関とのやり取りの際にご活用下さい。 SSP 棘上筋 ISP 棘下筋 TM 小円筋 SSC 肩甲下筋 LHB 上腕二頭筋長頭腱 CHL 鳥口上腕靭帯 RIC 腱板疎部関節包 SGHL 上関節上腕靭帯 MGHL 中関節上腕靭帯 IGHL 下関節上腕靭帯 AB 前索 PB 後索 肩関節は非常に複雑です。 正しく正確に診れるように日々研鑽していきましょう。 北村 大也先生 整形外科医