vol.0171肩関節の所見(前方脱臼編)について
今回はコンタクトスポーツなどによく見られる肩関節の前方脱臼について、定義から脱臼の特徴、その後の関節弛緩の判断をする所見の取り方など見ていこうと思います。
前方脱臼とは関節固有の生理学的範囲以上、あるいは生理的方向以外の外力が加わると関節包や靭帯が損傷され、上腕骨頭と肩甲骨の関節窩の関節面相互の位置関係が失われ、肩に外転と外旋の力が同時に加わった場合に受傷します。
前方脱臼し易い理由として、後方には肩峰が存在し、さらに多くの筋も存在する為、骨と筋の両方でロックされていて後方脱臼は起こり難いのです。
前方には骨が無く、筋や関節包・靭帯のみでの支持になるので脱臼しやすい訳です。
発生学的な考え方として昔は四つ這いで生活していた為、上方脱臼しないように肩峰でロックする様になっていました。
しかし、2足歩行となった為、骨でのロックが後方のみになり、前方は脱臼しやすくなったというわけです。
更に脱臼の2次障害として次の症状が考えられます。
筋断裂・骨折・神経損傷・関節唇損傷見逃さないように細心の注意を払うようにしましょう。
次に脱臼後に関節のゆるみを見る所見を確認していきましょう。
次の種類があります。
1. Anterior apprehension test
- 患者肢位
- 坐位
- 方法
- 検者が後方より肩関節をゆっくりと外転・外旋していく
この時点で、不安感や恐怖感を示し、更なる動きに対して抵抗する場合を陽性とする
- 注意
- 水平伸展方向に気をつける骨頭部を把持して行う
2. ABIS test(abduction inferior stability test)
- 患者肢位
- 坐位
- 方法
- 肩関節を外転90°に保持し、骨頭に下方への力を加える
- 注意
- 三角筋の収縮が出ない様に保持する
3. Sulcus sign
- 患者肢位
- 坐位
- 方法
- 上肢を肘の上で保持し、下方にひくと肩峰と上腕骨頭の間に陥没が起きる
4. Load and shift test
- 患者肢位
- 坐位
- 方法
- 上肢を下垂し、骨頭を前後に動かす
5. Andrews Anterior Instability Test
- 患者肢位
- 背臥位
- 注意
- 骨頭の前面に指を当て確認する
脱臼後のリハビリテーションが再脱臼率を下げるといっても過言ではありません。
しっかりとした知識・所見を取る技術を習熟していきましょう。
- 北村 大也先生
- 整形外科医