vol.072湿布第2弾
前回は湿布の定義について少し詳しく書いてみました。
今回は湿布の有効成分と、それによる世代分け。
冷感と温感の違いについて説明していきたいと思います。
まず、現在の湿布には飲み薬の痛み止めと同じ成分(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)が含まれています。
インドメタシンとかフェルビナク配合とか宣伝されている物です。
これらを第2世代の湿布といっています。
第2世代の湿布ではNSAIDsの成分が皮膚から吸収され、皮下の組織にしばらく留まることが分かっています。
1日1回しか使用しない湿布は、数時間貼付すると1日中皮下のNSAIDsの濃度が保たれることが分かっているので、1日1回のみの使用になっています。
なので何度も貼り替えても効果が強くなることはありません。
一方第1世代の湿布といわれるものにはこれらNSAIDsは含まれていません。
鎮痛効果が劣る、サリチル酸メチルやL-メントールなどが含まれているだけです。
湿布に含まれる鎮痛成分も時代とともに進化したということです。
次に冷感湿布と温感湿布の違いですが、これは味付けみたいなものです。
メントールなどの成分が含まれているとハッカ飴と同じですーっと冷たい感じがします。
一方カプサイシンなどが含まれていればぽかぽか暖かい感じがします。
ポイントは感じがするということです。
これらは冷感や温感を感じる神経の受容体を刺激することによりこのような感覚を生じさせていますが、決して冷やしたり暖めたりする効果はありません。
久光(サロンパスなどを売っている日本ナンバーワンの湿布メーカーです)の試験によれば湿布剤(パップ剤)を貼った場合、冷感湿布だと3度、温感湿布だと2度ほど皮膚表面の温度は低下します。
しかもこれらの温度低下は湿布剤に含まれる水分が蒸発する時の気化熱によるものとされています。
さらにいうと筋肉は全く温度変化を来しません。
整理すると、温感湿布も冷感湿布もそう感じるだけで、温度を変化させる効果はほとんどないということです。
冷やしたいならアイシング、暖めたいなら入浴などの方法の方が効果は高いと言えます。
また、湿布剤(パップ剤)では冷感温感に関わりなく、気化熱のため皮膚のみの温度が低下します。
一方、テープ剤(プラスター剤)では被服効果(被われた効果)のため、0.7度ほど皮膚温が上昇することが分かっています。
つまり、貼付剤には冷やしたり暖めたりする効果はほぼないと考えてよいということです。
湿布を用いるのは痛み止めの成分を吸収させる、冷やっとして気持いい、暖かい感じがして気持ちいい、といったためになります。
ですから、病院で暖めた方が良いと言われたのに、湿布が出たといっても全然普通のことになります。
湿布は鎮痛効果を期待していて、決して体の深部を冷やしたり暖めたりすることは出来ないのです。
いかがだったでしょうか?
湿布の役割を知れば効果的に他の物理療法と組み合わせることが可能になるのではないでしょうか。
参考になれば幸いです。
- 北村 大也先生
- 整形外科医