vol.076痛風関節炎
特に怪我などをした訳でもないのに、急に足が痛くなって歩くのも辛い…。
見ると足の親指の付け根が赤く腫れている。
熱ももっているみたいだ。
もしかして痛風?毎年健診で尿酸値が高いと言われてたし、働きだしてから5.6年で体重も10kgも増えた。
仕事も忙しいし、とりあえず昔もらった痛み止めを飲んでおこう。
1週間くらい様子をみてたら痛みがとれてきたぞ。
まあ病院には行かなくてもいいかな。
半年後… あれまた足が痛くなってきた。赤く腫れてるし、今度は足も浮腫んでるみたいだ。
痛み止めを飲んでも中々良くならない。
2週間もたつのにまだ少し痛いし、浮腫みも引かない。
このような患者さんが来たら、まず痛風の患者さんだと思って間違いありません。
ということで今回は痛風と高尿酸血症について書いていきたいと思います。
痛風という病気は、尿酸塩の結晶が関節内に析出し引き起こされる関節炎です。
血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続いている人に、脱水などがきっかけで発症します。
痛風関節炎は7-10日くらいで落ち着き、その後は何も症状のない時期が続きます。
そしてまた忘れた頃に発作が再発します。
その頻度ですが、30歳以上の男性で高尿酸血症は30%、痛風の患者さんは1%、一方で女性の患者は少なく高尿酸血症が2-3%程度とされています。
痛風の歴史は古く、紀元前5世紀のヒポクラテスも治療薬としてコルチカム(コルヒチン)を使用していたとされています。
しかしこれはあくまでも対症療法で、1951年に高尿酸血症の治療薬としてプロベネシドが発売されるまでは、根治療法はありませんでした。
尿酸塩の蓄積は関節にとどまらず、腎臓を冒し最後は尿毒症を発症して死に至る病気でした。
高尿酸血症の原因としては、体質的に尿酸の排泄が上手く行かない、尿酸の元となるプリン体の過剰摂取、肥満(内蔵脂肪の蓄積)、飲酒により肝臓の代謝経路が変わり尿酸生成が促進される、などがあります。
プリン体はレバーや肉類、魚介類の動物性蛋白質に多く含まれており、魚中心の食事だから大丈夫というものではありません。
また、プリン体制限とともに総カロリーを制限し肥満を解消することも食事療法としては重要です。
アルコール摂取はそれ自体が尿酸生成を促進するので、プリン体ゼロだから大丈夫という訳ではなく、ある程度制限が必要です。
現在は尿酸の体内からの排泄を促す薬や、尿酸生成を抑える薬があり、痛風の原因となる高尿酸血症を治療することが可能です。
昔のように死に至る病という訳ではなくなってきました。
しかし普段症状がないため治療しないで放置している患者さんもたくさん存在します。
冒頭の症状のような患者さんがいらっしゃったら、痛みが良くなってよかったではなく、高尿酸血症の治療を開始するように促して頂ければと思います。
自分の経験ですが、若い頃からの高尿酸血症を放置していたため、痛風関節炎を繰り返し、最後の発作時は痛みと腫れが引かず靴も履けない状態が数ヶ月続いた患者さんがいます。
レントゲンでは骨が萎縮していて、最終的に良くなるまでに半年以上かかってしまいました。
ここまで重症な患者さんはめったに診る機会はありませんが、普段からの治療がいかに大事かということだと思います。
- 北村 大也先生
- 整形外科医