実践と自信の正の循環。これがセルフケアの本質です
らくらく灸との付き合いのはじまりは、もう30年以上前になります。といっても、当時私は幼少でしたから、父がその頃から使っていたということです。らくらく灸は、以前は『おきゅう博士』という名称でラインナップも肩・腰・膝と部位別に分かれていました。現在の表記ですとハードが肩、レギュラーが膝、マイルドが腰に該当するイメージです。
これだけ長く採用している理由は、父も私もお灸をセルフケアとして取り入れてほしいと考えているからです。治療で使用していれば、患者さんがご自宅で使っていただく際も、やりやすいのではないかと。らくらく灸の良いところは四角形の台座が大きくて持ちやすい点です。お灸の途中で位置を変えたい場合に台座が小さいと、皮膚から持ち上げる際に「あつッ!」となってしまいがちです。セルフケアで一番大切なことは安全性ですから、シンプルなことかもしれませんが、安心安全に扱いやすい点は重要だと思います。
様々なメーカーさんが台座灸を販売されていますが、台座灸の中でらくらく灸の使用率が当院では9割です。症状に合わせて、もぐさを手でひねってお灸をすえることもあります。臨床的にはもぐさをひねって据えた方が、細かくツボを刺激し易かったり、点で刺激できる分高い効果を期待できる利点もあるのですが、複数人を同時並行して施術する場合はある程度手が離せる時間ができるので、らくらく灸ですね。燃焼時間が長く、温度上昇がなだらかな点も気に入っています。使用する温度の種類に関しては8割がソフト、部位によってはレギュラーという感じで、ハードは使っていません。レギュラーでも熱すぎると感じる場合があるので、ソフトのほんのり温かくなるくらいでいいと思います。身体の反応の変化を見ながら調整しています。
冒頭でセルフケアのお話をしましたが、患者さんの中にはお灸だけ買いにくる方もいらっしゃるんです。ある年配女性の患者さんは、夜中にこむら返りを起こした時は、自身でふくらはぎにお灸を据えて、落ち着いたらお休みになられるそうです。セルフで実践してお灸の良さをこうして感じていただいている方が何人もいらっしゃいます。セルフケアを推進させていく上で、私たちは患者さんにツボの名称や位置などの〝地図〟をお渡しします。ただ、それを知識的に覚えるよりも、はじめは正確な位置が分からずとも日々ツボを探ることを実践することが重要だと考えます。感覚的にツボを掴んでいく方がずっと効果的です。うまくツボにお灸ができたときの効果の実感は、セルフケアを継続するうえで必要な自信につながります。そして、この実践と自信(実感)の正の循環こそがセルフケアの本質だと私は考えています。しかも、らくらく灸の接触面の広さがあれば、感覚的にでもツボの位置を捉えやすいです。そうした意味でもらくらく灸はセルフケアに最適なアイテムと言えるのではないでしょうか。